フロントページオーケストラ ライブレポート
昨夜はひさしぶりに南青山Body&Soulでライブを堪能しました。区画整理が進んで大通り沿いとなり、危うく通り過ぎそうになりましたが、急な階段を降りるとそこはいつものハートウォーミングなライブハウスBody&Soul。私たちをあたたかく迎え入れてくれました。
三木俊雄さん率いるフロントページオーケストラは、十数年前に友人の紹介で聴いたのですが、はじめてのライブで受けた衝撃が今でも忘れられないでいます。それぞれが高度な技量を持った金管奏者たちが織りなす豊かで壮麗なメロディが、タイトでストレートアヘッドなリズムセクションに支えられて、聴く者の身体を包み込み、音楽の高みに連れ去ってゆく。音楽によって重力を失ってゆく経験と、その瞬間の甘美さ。演奏する楽曲のほとんどがオリジナルで、あくまでも音楽と音楽家の可能性を追及しようするこの稀有なビックバンドの高い志は、このバンドのオリジンと言ってよいのですが、それは昨夜の演奏でも健在でした。いやむしろ、すでに日本のジャズ界の中核を担うようになったメンバーたちの飽くなき音楽への思いは、先鋭化しているようにも思えたのです。
Body&Soulはライブハウスとしては決して小さな店ではないのですが、十人のビックバンドと楽器とがフロアに並ぶとただならぬ存在感を示します。オーディエンスと顔をつきあわせることにもなるのです。しかしだからこそ、ホーンからあふれ出るメロディを直接聴くこともできるし、その音の重層による音の圧力を生身で感じることもできる。メンバー同士のアイコンタクトや指示、仲間のすばらしい演奏に対する賞賛の言葉や握手、楽譜を見ながらの楽曲への批評、それがオーディエンスの目の前で包み隠さず行われるのです。私たちは、志を同じくする仲間とぎりぎりの高みでセッションする彼らの喜びの中に、招き入れられるのです。これこそジャズミュージックの真骨頂なのでした。
昨夜は新曲として、ミルトン・ナシメント作曲の「タルジ」が披露されました。これは三木さんが若いときに、特に強い影響を受けた楽曲。二十数年ぶりに聴いて「これがやりたかったんだ!」と思いアレンジをはじめたとのことでした。ラテンといっても、ナシメントの曲はキャッチーなフレーズがなく、むしろ転調・変拍子の連続で、アレンジは困難を極めたようですが、ユーホニウムをフィーチャーしたすばらしい豊かなボリュームの楽曲に結実していました。彼らにとってはあたりまえのことでしょうが、初演とは思えないすばらしい演奏であったことは報告しておかなければなりません。
私は、ひとつひとつの楽曲、ひとりひとりの技量についてコメントする能力を持ちませんが、フロントページオーケストラは、今聴くべき音楽のひとつだと確言できます。十数年前、私は最初のレポートで、この楽団を「今が旬」と書いたような気がしますが、ほんとうに失礼なことをしたものだと反省しています。「今こそ旬」そして「これからもずっと旬」であり続けるその覚悟を、私は昨夜の彼らから見てとりました。毎月最終木曜日にフロントページオーケストラの演奏を聴くことができます。是非南青山Body&Soulへ!
本日のメンバー
三木俊雄、浜崎航、浅井良将sax、岡崎好朗、松島啓之
Body & Soul
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