“No Name Horses” directed by Makoto Ozone
2008/3/30 sun. 20:30
Blue Note Tokyo
Second Show
Set List
01 OK, Just One Last Chance? (Makoto Ozone)
02 Stepping Stone (Toshio Miki)
03 Portrait of Duke dedicated to Herb Pomeroy (Makoto Ozone)
04 You Always Come Late (Makoto Ozone)
05 Reconnection (Eric Miyashiro)
Encore
06 Rhapsody in Blue (George Gershwin)
07 No Strings Attached (Makoto Ozone)
Ending
08 Toil Moil (Makoto Ozone)
なにか変だと思った。とても変だと思った。だって、ツアーの最終セットが、きっちり1時間5分で終わったのだから。
演奏されたどの曲も完璧なアンサンブルだった。息のあったビッグバンドの強烈な音の圧力を身に帯び、常識を超越したハイトーンからフロアを震わせるように立ち上がってくる低音まで、この世に存在するありとあらゆる音が、溢れ出しスイングしていた。三木さんが、自らの曲”Stepping Stone “の解説をするとき、「もうこれで最終セットかと思うと感無量です」といって立ちすくむ姿を見た。僕たちオーディエンスはこのすばらしいミュージシャンたちと共振し、深く感動した。"You Always Come Late"の命名者の方が紹介されて喝采を浴びた。エリックの曲”"Reconnection"の、名前の由来のすばらしさを、僕たちはその演奏で「経験」した。それは、すばらしく充実した完璧なステージだった。
でも・・・なにか変だった。小曽根さんのソロもなかったし、あっという間に最終曲になった。何かかある!でもその何かがわからない。
小曽根さんは、ステージの冒頭でオーディエンスに「今日は終電に乗り遅れてもいいですか?」と冗談まじりに問いかけていた。サックスの岡崎さんの紹介のときに、「彼はクラリネットもすごくうまくて、今夜ももしかしたらそれが聴けるかもしれません。」と言ってもいた。でも、それが伏線だとは誰も思わなかっただろう。
解き明かしは、アンコールだった。うなりをあげるオベーションの中で小曽根さんは言った。「今回はは最終ステージですから、少し長い曲をやってもいいですか?でも、この曲はオリジナル曲でもジャズのスタンダードでもないんです。まだCDにも入れていない曲です」エリックがうやうやしく楽譜を広げてみせる。とても長い…何だろう?
一息ついて、小曽根さんがコールした曲名は、「ラブソディ・イン・ブルー」。オーディエンスたちがどよめいた。「僕は楽譜がないので、見ないでやります」。それは突然決まったことなのかもしれなかった。"No Name Horses"からのこの上ない贈りもの。昨年12月のオーチャードホールで初演された、ビッグバンド版「ラブソディ・イン・ブルー」が、岡崎さんのクラリネットのソロで始まったのである。
オーケストラ版とほぼ同じ約25分。長い、長い、アンコール。原曲に忠実なクラシカルなテイストを残しながら、ある音で息がぴたっとあうとビッグバンドの咆哮が強烈にスイングしてみせる。ソロパートの自由闊達さが、かえってガーシュインへのオマージュとなる。そして、メンバーひとりひとりへの愛と尊敬と信頼の思いが、ひとつひとつの音に結実してゆく。初演とは全く違う展開だが、でもこれはガーシュイン以外のなにものでもない。あまりにもタイトでスピリチュアルな演奏に、僕たちオーディエンスはあたり前のように、熱狂した。
ジャズクラブでは珍しいスタンディング・オベーション。ひとりたち、ふたりたち、アンコールの2曲目"No Strings Attached"でフルスイングしたあとは、Blue Note Tokyoが総立ちになった。もう立たずにいられないのだ。そう初めてジャズクラブを訪れた人でさえも。
金管のメンバーが、客席の間を演奏しながら練り歩き、リズムセクションの3人が控え室の戻ったあとも、オーベーションは終わらない。まるで、クラシックの演奏会のように、メンバー全員がステージに戻って、オーディエンスから賞賛の拍手と歓声とを受けた。ブラボー!
ロックのコンサートのように客席総立ち、そしてクラシックのコンサートのように鳴り止まぬ拍手。でもそれは、確かにジャズだった。スタンディングオベーション。あのBlue Note Tokyoで!
それはとても感動的な光景だった。強く胸を打たれた。終わってほしくなかった。オーディエンスはもちろんだが、メンバーたちもみんなそう思っていたはずだった。だから、会場がひとつになった。言葉で説明できない思いを、あの場にいた誰もが感じていたはずだ。
だから、僕たちは彼らの、"No Name Horses"の次のレコーディングを待つ。次のツアーを待望する。ここまですごくて、だからこれで終われるものか!僕はそんな彼らの声を聞いた気がする。
僕はだから祈る。はやく彼らに帰ってきてほしい。そう祈る。そして、彼らは僕たちの期待に応えてくれるだろう。
小曽根さん、"No Name Horses"のみなさん、ありがとうございます。僕はもうこれ以上書けないです。ほんとうにありがとう!
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