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2008年3月30日 (日)

ガーシュイン!!

今日は、ブルーノート東京へ"No Name Horses" directed by Makoto Ozone 最終日を聴きにいってきます。水曜日も行きましたから、今回の公演は二度目になりますが、毎日聴きにいきたいくらいの完璧なそして美しいアンサンブルが展開されています。今夜もすばらしい夜になることでしょう。ガーシュインの美しいバラード"Someone to Watch Over Me"が今夜も聴けるでしょうか。

少し前ですが、2月にサントリーホールで行われた大フィル定期演奏会のレポートを掲せておきます。これもまた実にすばらしいガーシュインでした。

大阪フィルハーモニー交響楽団 45回東京定期演奏会

2008217日(日) 14:00

東京 サントリーホール 大ホール

ラヴェル 『道化師の朝の歌』

ガーシュウィン 『ラブソディ・イン・ブルー』

アンコール 小曽根真 『ワイルド・グース・チェイス』

ベルリオーズ 『幻想交響曲 作品14

アンコール エルガー 『エニグマ変奏曲』よりアダージオ「ニムロッド」

指揮 大植英次

独奏 小曽根真(ピアノ)

コンサートマスター 長原幸太

管弦楽 大阪フィルハーモニー交響楽団

最近は、仕事に追われ、小曽根さんの出演されるコンサートやライブに行ってもレポートが書けない自分に歯がゆい思いをしています。しかし昨年は、コンサートやライブに出かけることさえ出来ない状況でしたから、年末のオーチャードホール、先月の紀尾井ホール、そして今回のサントリーホールと、たてつづけにすばらしい演奏を聴くことができただけでも幸せというべきでしょう。この三回の公演を通じて、小曽根さんが、より加速度を増すようにして、音楽と戯れつつも格闘し、新しい境地に導かれつつあることを確信しました。

つい先日のことになりますが、長く壊れていた我が家のHDDプレイヤーが修理されてきて、ハードディスクの中に、思いがけず、大植英次さんの『情熱大陸』が残されていたことに気づきました。確かこの番組は、20057月に東洋人指揮者としてはじめてバイロイト音楽祭でワーグナーを指揮される直前のオンエアでしたが、音楽への限りない愛と尊敬を情熱的に体現したその生き生きとした姿に、僕はいちどきにこの音楽家の魅力にとりつかれてしまいました。そう、小曽根さんのときと同じように…。携帯電話に流れるニュースで、大植さんがバイロイトで指揮をしたという記事を読んだことも、非常に鮮明に覚えています。ですから、昨年、大植さんの指揮する大フィルと小曽根さんの公演が決まったと聞いたとき、ほんとうにうれしく(まさに狂喜乱舞というやつです!)思いましたし、その後、東京の定期公演でも同じプログラムで演奏されると聞き、ほんとうにこの日を待っていたのです。いや、僕だけではない、ほんとうに皆が待ち焦がれた公演でした。二人の将来を嘱望される音楽家が、若き日にアメリカで出会い、20年越しの夢を実現した共演であるとは知るよしもありませんでしたが、今その話を伺ってさらに感動を深めています。

しかし、それにしても、凄まじいほどに深く美しい演奏でした。小曽根さんのラブソディ・イン・ブルーは、もう数度聞いていますけれど、今回の演奏は、今までの中で、もっともリリカルでスピリチュアルなそれではなかったかと思うのです。小曽根さん自身が語っておられるように、アメリカでの経験が長いマエストロ大植の、深いガーシュインへの理解、ジャズへの畏敬の念が触発したものなのでしょうが、小曽根さんのソロのパートは、驚くべき広さと深み、そして美しさを持つインプロヴィゼーションでした。それは、ガーシュインが譜面に書いたメロディとリズムそしてコード進行に導かれた緊張感のある対話であり、小曽根さん自身の内なる魂の吐露であったと思います。鋭角的な大植さんのコンダクトを受けて、最初にピアノがグッとためるようにして静かに鳴り始めたとき、これは何かが起こるという予感はしましたが、クラシカルな語法を持つブルースとでも言ったらよいのか、バロック風のラグタイムとでも言うべきか、それは、クラシックとジャズの領域を越えるというような図式ではなく、音楽を通じて20世紀そして21世紀に生きる人間の憂愁や喜びを創造し表現してゆくような壮大な奥行きを、僕は実感したのでした。それでも、途中で、この曲は正直どこまでいってしまうのか、僕はドキドキせずにはいられませんでした。僕は、小学四年生の息子とこの演奏会に来たのですが、お隣がドイツ語を話すカップル(たぶんご夫婦なのでしょう)で、このいかにもクラシック好きのヨーロッパ人が今日のガーシュインをどう聞いているのか少しだけ気になったのです。でも、それはおせっかいな僕の関心でした。女性は少し驚いた笑顔で、男性は脚でリズムをとりながら、身体ごとスイングしているではありませんか。むしろ僕のほうが、先入観にとらわれていたのでしょう。僕は自分の愚かさを戒めるようにして、再び小曽根さんとオーケストラの緻密な対話に身をゆだねたのです。サントリーホールに集うすべての聴衆が、今生まれたばかりのガーシュインに酔いしれたのでした。そして感動的なフィニッシュを迎えたのはいうまでもありません。

クラシックコンサートのオベーションは終わりがないものです。小曽根さんもマエストロも何度も舞台袖にひっこみ、そして何度も歓喜と称賛の声で迎えられました。ブラボー!やがて、大植さんに肩を押さえつけられるようにして小曽根さんがピアノの前に座りました。すると小曽根さん、お客さんに向かって「なに弾きましょうか?」と問いかけます。「にぎやかな曲?それとも静かな曲?」。すかさず大植さんが、「どっちも!」。このかけあいで、ホールが大きな笑い声に包まれました。小曽根さんが弾いたのは、「ワイルド・グース・チェイス」。僕たちにファンにとってはおなじみの曲ですが、このアンコールはオーディエンスに対してばかりではなく、マエストロやオーケストラのメンバーにも献げられるべきものですから、小曽根さんは渾身のフルスピードで愛を歌い上げたのです。サントリーホールは、この日たった一曲だけ演奏されたピアノソロ曲に集中したのです。クラシックホールが、スイングしていました。みなさんからのレポートによると、今回アンコール曲として小曽根さんは、初日に「シー」、二日目に「ビエンヴェニドス・アル・ムンド」を演奏されたそうです。さてさて、呉と岩国の公演ではどうなるのでしょう?きっとオーケストラのみなさんも楽しみにされていることだと思います。

今回のコンサートは、前から二列目の右側の席で聞きました。小曽根さんの指使いは全く見えませんでしたが、小曽根さんと大植さんの濃密なアイコンタクトを目の当たりにしました。そして、実に情熱的で繊細な大植さんのタクトさばきと豊かな表情やジェスチャーに酔いしれました。マエストロ大植の指先は震えるのです。音楽に酔いしれて心から震えるのです。僕にとって、ベルリオーズは初体験で、第五楽章まである大曲ですが、マエストロの情熱にオーケストラがインスパイアされて、実に緊密で色彩豊かな演奏で感動しました。実は僕は、小曽根さんの出演するクラシックのコンサートでは、小曽根さんの演奏以外にはブラボーを叫んだことはなかったのですが、今回ばかりはもう我慢ができませんでした。あの大きな目を見開いて、ホールのすみずみまで見つめ、聴衆の拍手を受ける大植さん。マエストロ大植と大フィルのみなさんに栄光あれ!二階席では、小曽根さんと美鈴さんがスタンディングオベーションをされていましたが、マエストロがそれに気づき手を振る。その愛にあふれた姿に、この日のコンサートの成功がすべて象徴されているかのようでした。ほんとうにすばらしいコンサートに感謝するほかはありません。

そうそう、僕の目の前のステージ上にはコントラバスのパートの方が座られていました。ジャズの世界でも、ベーシストには哲学者の風貌をした方が多いのですが、大フィルの主席奏者新真二(あたらししんじ)さんもインテリジェンスにあふれる長身でハンサムな方でした。さきほどインターネットで調べてみたのですが、新さんはこどものころからジャズが好きで、ビッグバンドに入ることを目指して、ベースを始めたそうです。そこから音楽家としてのキャリアが始まったらしい。大フィルには、こんなメンバーもおられるのですね。きっと小曽根さんとの出会いを、オーケストラのメンバーのみなさんも楽しんでおられることと思います。あと二回のコンサート、呉と岩国は、広島市生まれの大植さんにはいわば地元。きっとすばらしいコンサートになるでしょう。これからのコンサートに行かれるかたは、どうぞ存分に楽しんできてください。

小曽根さん、大植さん、大阪フィルハーモニー交響楽団のみなさん、すばらしいコンサートをほんとうにありがとうございました。また、同じメンバーで、ツアーをされるよう念願しています。そして、小曽根さん、七月のオーチャードホール、井上道義さん指揮NHK交響楽団との共演も楽しみにしています。またまた、ガーシュインがびっくりして冥界から聴きにくると思います。

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