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2006年6月 4日 (日)

モチベーション

木曜日のこと。添削を取りに来た女生徒が、関西のいくつかの大学についての質問をした。入試の傾向と勉強法についてである。最近では、関西の大学を東京でも受験することができる。地方試験を積極的に行っているからだ。僕は、いくつかの大学について知る限りの情報を駆使してアドバイスをしたあと、「でもなぜ関西の大学なの?」と質問してみた。親元を離れれば、幸福なパラサイトの生活は終わる。滑り止めとして一応受験するならともかく、首都圏の受験生が関西の大学を受けるには、それなりのモチベーションが必要だからだ。「私は、関西の企業に就職したいんです。それには、関西の大学の方が有利だと思って…。先生はどう思われますか?」。「うん、確かに関西の大学は関西の企業には太いパイプがあると思うよ。で、例えばどこの会社ですか?松下?サントリー?」。「いいえ、私はどうしてもミズノに入りたいんです。スポーツに関連した仕事がしたいので…」。(なるほど)。「そうだね、ミズノもアシックスも関西の企業だもんね。」「私、ミズノかアシックスに入りたい…とそんな漠然としことしか考えてなくて…。その他のことはまだ何も考えていないんです。」(いえ、いえ、もうあなたは十分すぎるほど考えているよ。具体的で見事な夢!)。「で、第一志望校はどこなの?」。「早稲田大学のスポーツ科学部です」。(やっぱり…)そこで僕は、以前このブログに書いたこと…つまり、早稲田大学スポーツ科学部のカリキュラムの充実度や将来性、しかし、卒業生が必ずしもスポーツの世界に留まらないことの問題点、そしてスポーツに関するプロフェッショナルの必要性などに語ったあとで、まずは第一志望校を目指して頑張るようにアドバイスした。僕がもちろん、高いモチベーションに支えられたR-bodyのトレーナーたちの姿に日々感動していることも付け加えて…。

「私は、大学でスポーツマネジメントを学んで、ミズノのようなスポーツメーカーに入りたいんです」。なぜミズノという企業が彼女を惹きつけているのかはわからないが、しかし、彼女に明確な夢を与えているのは事実である。「で、あなたは今年スポ科は受けたの?」。「はい、でもダメでした。ここに受験の結果があるんですけど…」。最近大学のサービスは充実している。早稲田大学は、有料だが、受験生に受験結果の告知をしているのだ。今春の入試で彼女がとった成績が、合格最低点とともに打ち出されていた。彼女の成績は、合格最低点の一割下くらいだった。スポ科では、英語と国語(数学)の得点が一定以上でないと小論文を採点の対象にしてくれないのだが、彼女はそのレベルを十分に超えており、小論文も加えた三科目の成績が記されていたのである。「ボーダーラインのあたりには、たった一点にもたくさんの人がひしめいているから、私なんて全然ダメです」と彼女は謙遜する。「絶対大丈夫です…とはいえないけれど、あなたのようにモチベーションの高い人が一年頑張れば、来年は十分合格できるよ。決して難しい闘いではない。来週からも、頑張ろうね。僕も応援していますから…」。その瞬間、不安そうだった彼女の顔が少しだけ緩んだのだった。彼女の提出した添削は、モチベーションの高さを反映して実に丁寧で用意周到だった。勉強をはじめた今はあふれる情報に溺れている状態だが、今後は彼女自身が多くの情報の中から必要なものだけを選び取り、読解のスピードをあげてゆくことも大切になる。ただ、「ゆっくり弾けないものは、絶対にはやくは弾けない」という真理は、音楽でもスポーツでもそして勉強でも変わらない。そして、練習も努力も必要である。そのことを、彼女はなんとなく理解しているようだった。「で、あなたは高校時代どんなスポーツをやっていたの?」。「ハンドボールです」。大学入試はたいていの場合、インターハイに出場するより易しいと僕は思う。もちろん、オリンピックやワールドカップなどとは比べようもないのだ。だから、大学入試という小さな関門をまず乗り越えて、次の大きな夢に向かって頑張ってもらいと願わずにいられない。帰ってゆく彼女の背中に、心の中で「頑張れよ!」と声をかけた。

ひとつだけ心配なのは、彼女のような生真面目な生徒は、時としてポキッと折れてしまうことがあることだ。特に自分にとって決定的な挫折感を感じた瞬間、高いモチベーションも希望も放棄してしまうことがある。幸いなことに、彼女にとって一度目の大学受験は、そのような契機にならなかった。だが、彼女の夢に対して、親なり教師なりまわりの大人たちが無関心を示し、彼女がそれに失望し周囲に対して信頼感を失ってしまうと、意外に弱い一面が顔をもたげてくるかもしれない。だから、もちろん適切な競争は保持しなければならないものの、彼女のようなモチベーションの高い若者に対しては、大人たちが常に関心を払い続け、真剣に向き合っていかなければならないと思うのだ。少なくとも、若者たち自身の才能や努力が足りないこと以外の理由で、彼らに夢をあきらめさせるような社会を準備しないことが、僕たち大人に与えられたミッションだと思う。予備校講師たる僕も頑張るが、大学の先生たちにも、そして企業社会の方々にも、是非頑張っていただきたい。そして現在は、大人たちが真剣に手を結び合うことが必要な時代なのである。そうは思いませんか?

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コメント

立派な生徒さんですね。
何か彼女にも役に立ちそうなものが無いか、と考えたところ、もしかしたら、と思い出したのでご参考までにお知らせしておきます。

昨年の夏に私が参加した「国際ビジネス女性会議」。名前がすごいですけど、仕事をしていない学生さんでも参加できる、すごい会議なんです。大学生になってからでもいいと思いますけど、様々な業界の方と知り合う機会にもなりますし、ビジョンを描くにも、生のビジネスを知る意味でも有意義ではないかと思いました。

昨年のレポートがありますのでよろしかったらご覧ください。今年は11回目、あと10年続けると主催者の佐々木かをりさんはおっしゃています。参加者は高校生から70代、中心は20代から40代ですが、私も関西の学生さんとお話したり、男性も10%以下ではありますが女性の活用に積極的な企業の方が参加していました。
イー・ウーマン
http://www.ewoman.co.jp/iwb/top.html

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