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2006年4月14日 (金)

「古典」を読むこと

 気がついたら46歳になっていた。若い頃、自分の42歳までの姿はなんとなく想像できていたのだけれど、なんだかそこまでで人生が終わりそうな気がして、その先を考えようともしなかったことを思い出す。もうあれから4年も生きてしまったのだな…最近よくそんな風に考える自分がいる。

 人生そのものが"terra incognita"(未知の国)を旅するようなものだが、とりわけこの数年は異国に迷い込んでさまよい歩いている気すらするのはなぜなのだろう。仕事には十分慣れ、生活はそこそこ安定しており、家族との小さな幸せも確かにある。そして、それはかけがえのない大切なものだとも思う。だが、だからこそ、それを守るためだけのために、時として自動化して「安楽」に生活している自分が、まるで異国人のようにも思えてくるのだ。僕はこんな大人になりたかったのだろうか?せわしない日々の生活に、なんとなく息苦しくさを感じ渇いている自分がいる。子どものころの自分のまなざしに審判を受ける自分がいる。

 唐突だが、これから本気で「古典」を読もうと思っている。都会の雑踏の中で、職場のざわめきの中で、家族との団らんの中で、歴史に淘汰されてきた古人たちの言葉に向き合う。いまさら、かっこつけて哲学者を気取るつもりはない。孤独にならなくてもいいのだと思う。家族と公園にでかけてシェークスピアの気に入った一節ずつを朗読する。病院の診察室で医者と『徒然草』談義をする。転職の相談に来たかつての教え子にアウグスティヌスの回心について語ってみる。そんなたわいもない日常の中で「古典」を読んでゆきたい。理解できなくていいのだ。古人の声に自分の声を重ね合わせることができるのなら…。

 読書好きを気取りながら「新書」ばかりを読んできた僕だ。思潮の動向に敏感で、「思想」だってファッションのひとつだった。そこから何も学ばず、何も身についていないことは、自分が一番わかっているつもりだ。ファッションはすてきだが、僕にはもうそれにつきあう体力も時間も残されてはいないような気がする。だから今「古典」を読む。

 僕は、大学・大学院で日本の古典文学を専攻し、今は予備校で受験生に「古文」を教えている。だけど、どうも日本の古典がしっくりこないままだ。『源氏物語』はいまだに好きになれない。『徒然草』はようやく魅力が見えてきたところかもしれない。松尾芭蕉はこれからだ。で、今のところ、モンテーニュが一番肌に合っている気がする。「道徳観察者」という正真の「モラリスト」、山の向こうにはまた別の正義がある…と語る中世のフランスの哲学者はとても魅力的だ。だから、『エセー(随想録)』を読む。『徒然草』と比較しつつ…。

 僕には夢がある。今は一介の「古文(日本)」教師に過ぎないけれど、いつの日か「古典」の教師になる…という夢だ。「古典」の上に、日本の…とか、中国の…とか、ヨーロッパの…とかつかないただの「古典」の教師。専門はない。『チップス先生さようなら』のチップス先生のように、ラテンの引用句を会話のふしぶしに入れ込むのではなく、快活に日常生活や芸術について語るおしゃべりな教師。考えがまとまらないとき、あの人と話したらなぜか頭が整理されてはっきりと問題点が明らかになった…と言われるような穏やかな明晰さを持ったメンター。まあ、僕には無理なはなしだが、でもそういう人になってみたい。なれたらいいな。

 時間はないが、時間はある。だから、ゆっくりこのブログに自分の歩みを残してゆきたいと思う。本来軽薄な流行大好き人間だから、すぐに馬脚をあらわすだろう。そのときは、思いっきり笑ってやってください。古典とジャズと教育と…へんなとりあわせの「哲学のライオン」出発進行!

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コメント

ブログ開設おめでとうございます!
まず初めは古典を読む!という日々の目標なのですね。

古きよき物は最近の時間の流れが速い中、忘れがちですが本当に素晴らしい先人たちの創造物が詰まっていますよね。

私も最近古いものがmy ブームとなっています。

また遊びに来ます!
取り急ぎおめでとうございました☆

ひかるさん、コメントありがとうございます。どんなブログになるか、僕自身見当もつきません。さっそく「古典」に関係ないことばかり書き込んでいますが、基本は見据えてゆこうと思っています。どうぞこれからもよろしくお願いします。

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