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2006年4月18日 (火)

満員電車嫌い

満員電車が死ぬほど嫌いである。特に朝の通勤ラッシュは…。ようするに僕は岡山生まれの田舎者ということなのだろう。これでも19歳で東京に出て来て、中央線沿線に住んでいた頃は、そつなく快速電車に乗るこができた。当時は知らぬ間に腕時計が引きちぎれるほどの過酷なラッシュだったが、毎日なんとか通学することができていた。だが、今は…もう出来ない。

山手線など、昼間でもすし詰めの電車が走っていることがある。そんな時は、いつもホームで数本の電車を見送ることになる。正直、あの人いきれと圧力の中に身を投じることが怖いのだ。いまどき、痴漢と間違えられる可能性だってなしとは言えない。スピードの出る特急や急行電車はとりわけ混む。だから、なるべく乗らないようにしているのだが、三年ほど前、土曜日の朝の東横線の急行電車に乗ってドアのサイドに立っていたら、20代中ごろと思しき女性が駆け込んで来るやいなや、僕のすねを後ろ足で蹴りあげて無理やり押し込んできた。僕は蚊の鳴くような声で「どうして蹴る必要があるんですか?」と問うたが、むろん相手は僕と目をあわせようともしなかった。僕はそれからほぼ一週間人間不信に陥り立ち直れなかった。東京は怖いところだ…今でもときどき本気でそう思う。都市生活は、人間疎外の構造を本質的に内包している。

だから、今朝は六時過ぎに家を出た。都心の校舎、始業は九時である。七時過ぎにもよりの駅につき、校舎が開く八時までファーストフードの店でコーヒーを飲む。授業の準備をしたり、読書をしたり…。孤独な、ちょっとすてきな時間だ。朝早い電車に乗っているサラリーマンたちは、みんなちょっといい顔をしている…というと言い過ぎだろうか。席が空いているのに立っている人がいたりして、人間らしい、自分らしい空間を守り抜くための闘いに挑んでいる人が多い。

今日担当したクラスは、国公立文系のクラスで、全国から受験生が集まっていた。首都圏だけではない。新潟や秋田、山梨や長野、山口そして鹿児島。寮があるからだろうが、まるで大学のように多彩な顔ぶれだった。おもしろい…僕はそう思った。リラックスして楽しんでやろう。「浪人おめでとう!」毎年そう言って授業をはじるが、これで笑い声が出るクラスはよいクラスなのだ。彼らの数人が声をたてて笑った。「僕は、何が嫌いって満員電車が一番嫌いです。だから、この校舎には一番にやってくる。君たちも早起きして朝質問や相談に来てください。八時には来ています。このクラスは、全国のいろいろなところからやって来ている人が多いね。まるで大学だ。でもね、はやく東京に馴れなきゃと思って頑張りすぎないでください。予備校に馴れて、ついでに東京に馴れてって考えてたら、緊張でがちんがちんになっちゃう。まあ、僕なんか東京に二十数年いて満員電車に乗れない。こないだ二十代の女性に後ろ足で蹴られて人間不信になりました。東京は…東京出身の人は知ってるだろけれど、怖いところです。でもね、怖いままでいいじゃないですか…今年はね。というわけで、勉強の話なんですが…」と言って、授業に入っていった。にこにこ笑っている生徒がいて、ちょっとうれしかった。さあ、どうなりますか。もう心は来週の授業に飛んでいる。

午前中で授業を終え、いつものように恵比寿のジムに寄る。R-body Project(http://www.r-body.com/)がその名だ。今日の担当はY君。僕がこのジムに来た最初の日から担当してくれた心優しい青年である。だから、彼は一年前の僕の身体がどんなにだめだったかを熟知している。その上で、「最近すごくフォーム良くなりましたね。全然去年と違いますよ」と言ってくれるから、とても自信がつくというわけだ。彼とはこの一年間、お互いの仕事の共通点についてよく語ってきた。そして、パーソナルトレーニングのこつを彼から教えてもらったと思っている。彼は優しいので、いつも「今日は体調はどうですか?」と聞いてくれる。正直、この歳になって絶好調というときはあまりないので、「今日は肩がね…首がね…」というと、じゃ今日は軽めでいきましょうといって、ストレッチをはじめ新しいケアテクニックをメニューに組み込んで教えてくれる。日常の中で使えるテクニックが多いので、とても助けられている。今日も、はじめ「軽めに行きましょう!」と言っていた彼だが、首のストレッチを組み込んだ上で、きちんとすべてのメニューをこなし、その上ベンチプレスのウエイトが、37.5キロに上がっていた。ウエイトが少しでもあがるというのは、僕たちクライアントには大きな達成感のご褒美を与えてくれる。「これの達成感を僕の生徒たちに与えたいんだよね。でもなかなか難しい。でも、今日はなんだかんだ言って、Y君に導かれて全部メニューをこなすことができたね。ウエイトも少し上がったし…いや、うれしかったですよ」と僕。「お客さんが調子がよくないときに、どうするか。軽くする手もあるけど、でも本当はきっちりやったほうが後で身体にいいとわかってるんですよ。それで悩むときがあるんですよね、僕は」と彼。いやいや、前回のN君とは違うアプローチだけれど、これもまたひとつのコーチング道なのだと思う。

『法華経』に「方便品(ほうべんほん)」というお経がある。「嘘も方便」の「方便」だ。「方便」は正しい手段のこと。ブッダは、それぞれの人に、時や場所に応じて、無数の異なる教えを説いてきた。だが、それは多くの教えがブッダの中で矛盾し混乱しているのではなく、たったひとつの真理に到達するために、ひとりひとりが別のルートを歩んで行かなければならないとうことを指し示していたのだった。無数の教えが、ある一つの真理から出たものだあることを人々がさとるとき、人々は「仏」となる。

ひとりひとり、時や場所に応じて、最適のトレーニングメニューを提供する必要性については、受験勉強でも同じことだ。そして、クライアントの要求に臨機応変の対応をするためには、コミュニケーションのスキルを上げてゆかなければならない。一対多の授業の中で、いかなることが可能性があるのか、どうやら今年はそれが僕のテーマになった。なかなかおもしろいじゃないか!

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